秋田県にかほ市

アイガモロボで環境保全型農業を目指す

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山と海に抱かれ風向明媚な秋田県にかほ市で、民間企業3社が農業分野の課題解決を通じた地域の活性化を目指して最先端の技術を持ち寄り、地元の生産者・自治体と共に持続可能な新しい農業への挑戦が始まっています。

農業が盛んな当地で、スマート農業を取り入れた有機栽培をはじめとする環境保全型農業モデルを確立すべく革新的な取り組みに日々邁進している関係者の皆様に、2022年度の実証についてお話いただきました。

環境負荷の低い水稲栽培体系の実現に向けて

SDGsへの対応強化などを目的として「みどりの食料システム戦略」が農林水産省にて策定され、化学農薬・化学肥料の使用量低減や有機農業の拡大などより環境に配慮した持続可能な栽培体系への積極的な転換が急務となる中、環境負荷の低い稲作モデルの確立とその普及拡大を通じた地域社会の発展を目指し、にかほ市及び地元生産者の(株)権右衛門を中心にTDK(株)、有機米デザイン(株)、井関農機(株)の5者により2022年に連携協定を締結しました。

この連携では持続可能な栽培体系の中でも水稲有機栽培に着目し、栽培で課題となる除草作業の負担をアイガモロボを用いて軽減することを目指す実証を中心に、レーザー均平装置や水位計測センサー、最先端の田植機やコンバインも取り入れた「環境保全型スマート農業」による営農モデルの実証試験に取り組んでいます。

インタビュー

お話をお伺いした各者のご担当者

地元にかほ市で400年以上農業を続けている(株)権右衛門で現在代表を務められている須田様、地域農業を取りまとめるにかほ市農林水産部長の池田様、にかほ市に大規模な製造・開発拠点を構えスマート農業分野への技術提供にも積極的なTDK(株)のアグリソリューション課リーダーの村上様にお話を伺いしました。

現在の有機栽培への取り組みについて教えてください

須田様:(現在)紙マルチ田植機を使った農薬を使わない栽培を1町歩ほど行っています。以前は6町歩くらい手押しの除草機も使ってやっていた経験もありますが、体力的に若くなくなってきたので縮小しているような感じです。有機のお米はまだまだ需要がありますので、今後はスタッフにも有機栽培の知識、経験を積んでもらいアイガモロボで面積を増やしていきたいと考えています。

アイガモロボを使った感想はいかがでしたか?

須田様:田植前、代かきの状態からアイガモロボをほ場に放して酸素を与えられるので、初期生育も良いと感じます。その後の除草効果もこれまでいろいろ除草で苦労した中では効果があったと実感しています。(アイガモロボを使っていく上では)水管理で一定の水深を保つことで、アイガモロボが自由に動き回れることが一番大事だなと感じました。

村上様:アイガモロボは年々良くなっています。(抑草効果について)コドラート法等も活用し数値として捉えておりますが、今年も非常に良かったので今後のモデルも楽しみにしております。(アイガモロボを使う上で大切なのは)ほ場の均平ですね。あとはほ場周辺の環境や用水・水位の管理になってくると思います。難しいことではないのでしっかりやっていければ、非常に効果が期待できると思います。

池田様:(今年の結果は)若干雑草が見えていましたが農薬を使わない栽培としては合格点と思っておりました。ですが、皆さんは現状に満足されておらず、課題や原因、このあとの改善や対策を研究されていますので、今後(2022年の課題を改善し)アイガモロボの新たな取り組みを期待しています。

生産者としてアイガモロボに期待することや、今後の意気込みをお聞かせください

須田様:1町歩で1台動かせたり、代かきの代わりをしてもらって、アイガモロボで田植までもっていけるような機能があればいいなと期待しています。そうなれば、田植前1~2週間からアイガモロボを投入できますので、田植前の雑草を気にしないで田植まで迎えることができ作業効率がよくなるのではと期待しています。

(権右衛門は)5年以内に水稲100町歩を想定して、アイガモロボでの有機栽培、ALL JAPANスマート農機を活用しての大規模経営でにかほ市農業を盛り上げていきたいと思います。

また今年は、にかほ市内の若手農業者が中心となって設立した「にかほスマート農業研究会」会員の圃場でも6台のアイガモロボ、水位センサーなどを活用した環境保全型スマート農業を実践します。その農薬を使わず収穫したお米は、地元の学校給食で提供する予定で、子供たち、地域の皆さんがアイガモロボをきっかけに食と農業に少しでも関心をもっていただけると嬉しいです。

にかほ市として本取組で目指すことをお聞かせください

池田様:環境保全型農業、特に有機農業を進めていく一番の課題は雑草対策であり、アイガモロボはもっとも有効な手段と考えています。またこのアイガモロボやスマート農業が環境保全型農業だけではなく、担い手不足等の課題の解決にも繋がっていくことを期待しております。そしてアイガモロボやスマート農業(機械)は、導入コストがかかりますので、農業収入の向上も含めこの取り組みの中で検証していければと思っております。

そして本取組をぜひ成功事例としてまずはにかほ市内で周知して環境保全型農業の普及を図り、にかほモデルとして全国に発信できるよう、これからみんなで力を合わせて取り組んでいきたいと考えております。

インタビュー動画

プロフィール

株式会社権右衛門(実証生産者)
経営規模
水稲38ha、ネギ2.5ha、秋そば4.5ha
従業員
4名
取組方針
つねに挑戦を大切に、豊かな価値を創造し、農業を通じて地域社会の幸福に貢献すること。従業員とその家族を幸せにし、働きがいをもてる企業をめざします。
2023年2月現在